ソーシャルメディアでのブランド情報の入手やカスタマーサービスの利用、購買活動が急速に一般化している。それにともなって企業は、パーソナライズされたメッセージで、消費者へのリーチと彼らとのやりとりの手法を常に変えていく必要がある。
ソーシャルメディアマーケティングのレベルを上げるために、次の4つのテクノロジーを活用しよう。
チャットボットは、企業での導入が急速に広がり、オーディエンスとつながれる新しい方法としてマーケターに利用されている。Gartnerによれば、顧客との関係構築を目的としたチャットボットの使用は2020年までに カスタマーサービス業務の25%に及ぶと予測されている。また、FacebookのMessengerで活発に利用されている ボットは30万件以上と報告されている。
ブランド企業は、ソーシャルメディア全体から生成される膨大なカスタマーメッセージを管理し、生身の人間のような対応を行うために、ますますチャットボットを利用するようになっている。人工知能(AI)によって制御されるボットは、対話を繰り返すことで賢くなり、やがてマーケターのメッセージのパーソナライズにも利用できるようになる。また、チャットボットはカスタマーサービスの合理化と迅速化を促進するため、企業は日常の問い合わせを通じた苦情処理など、より重要性の高い問題に集中できるようになる。
AIを活用したオンラインエンゲージメントは、チャットボットにとどまらない。膨大なオンラインデータの分析、詳細なインサイトの獲得、オーディエンスの行動予測、ユーザーエンゲージメントの向上にAIを活用する企業が増えている。例えば、LinkedInの 高度な機械学習アルゴリズムは、場所や職歴といった情報を基に就職希望者を評価しており、就職あっせんサービスの向上に役立っている。
マーケティングの分野では、企業はデータから導きだされるインサイトによってコンバージョンの可能性が高いオーディエンスを特定し、関連性の高いカスタマイズされたメッセージでターゲットを絞ったマーケティングを展開できる。例えば、マーケターは、AppierのデータインテリジェンスプラットフォームAixon(アイソン)を活用して、新たな消費者層の開拓とその行動予測、ターゲティング広告によるコンバージョン率の向上が可能になる。
先ごろメッセージングアプリLINEと統合したAixonは、それらの機能を拡充し、企業がLINE上の消費者行動に関する強力なAIによって分析・抽出されるインサイトを得て、それらの消費者にターゲットを絞り込んだメッセージをプッシュ通知できるようにした。例えば、ユーザーがあるEコマースサイトを訪問し、ドレスをカートに追加すると、数秒後にはその商品に関連するプッシュ通知がLINEアプリに送信される。
2017年には拡張現実(Augmented Reality)がゲームやエンターテインメントの枠を超え、さまざまなソーシャルメディアでAR体験を提供するブランドが増えている。2020年までに 1億人の消費者がARでショッピングをすると見込まれ、新たなAR機能と顔認識システムを搭載したApple iPhone Xの発売と相まって、ソーシャルプラットフォームがAR技術を取り入れる動きがいっそう活発になるだろう。
ARは、使いようによって顧客と企業の双方にメリットがある。例えば、 IKEAのアプリでは、家具を買う前に顧客が自宅のインテリアのコーディネートをバーチャルで確認でき、情報に基づくより良い選択を行うことができる。その一方で、ブランドは顧客の暮らしに合った商品を具体的に示すことでコンバージョン率と売上を伸ばすことができる。
ロレアルは、メイクアップシミュレーションアプリModiFace ARを買収し、オンラインセールスの向上を見込んでいる。ユーザーは、顔認識システムとAR技術を利用して、製品を購入する前にアプリでメイクアップのシミュレーションを行うことができる。 Snapchatのシンプルなフェイスフィルターも最先端の広告手段として注目されている。
多くの企業が顧客や仲間同士がオンライン上で交わす会話の重要性を認識するようになり、ソーシャルリスニングツールの人気が高まっている。このツールによって、世間の声に耳を傾けることができ、異なるソーシャルチャネルを通じて消費者の会話に入り込める。そうした会話から生成される膨大なデータは、消費者のニーズや好みに関するインサイトが埋蔵されている金鉱脈のようなものである。
マーケターはAI機能を利用してキーワードやフレーズを特定し、消費者の属性や関心のみならず、人気のアイテムと関連する旬の話題を把握することによって、カスタマージャーニー全体で顧客の考えをより良く理解できるようになる。マーケターはそれらのインサイトを活用し、消費者の共感を生むコンテンツの作成や、必要とされるソリューションの提供を行い、消費者の生活において関連性の高い存在になることができる。
上記のテクノロジーによって、企業は多種多様で膨大な情報に基づいて精度の高い意思決定を行い、消費者へ効果的にリーチすることでターゲットを絞り込むことができる。カスタマイズされたマーケティングの時代において、常に消費者の目を引く、彼らにとって近い関係性を持つ存在になるために、これらのテクノロジーを活用することが有効だろう。