コロナ禍で2年が経ち、世界中の企業がデジタルマーケティングに対する考え方を、抜本的に変えています。ブランドを持つ企業や消費者は、MarTech (マーテック) と呼ばれるマーケティングテクノロジーに慣れ親しみ、新しいオンライン広告の形や、プッシュ通知、SNS投稿、また携帯アプリで受け取る新規入会特典やプロモーション割引など、消費の行動変容が浮き彫りになっています。
マーテックが人々の日常生活に浸透しつつある中、ブラウザのプロバイダーは、ユーザーの閲覧履歴の追跡をやめることを発表し、モバイル端末企業は、ユーザーが、自分の個人情報収集を拒否する管理機能を付けました。これらの変更は、サードパーティデータ時代の終わりを示し、マーテック企業に新たな挑戦を突きつけています。
企業は消費者の行動を把握し、広告予算を最適化したいと考える一方で、消費者は、自分の行動履歴をできるだけ開示せずに、関心があるウェブサイトやアプリ、または良く利用しているプラットフォームにのみ個人情報を残すように考えています。このような状況の中、ファーストパーティデータの価値を最大化することは、マーテック企業にとって最も重要な課題となっています。
AI x SaaS企業であるAppierは、サードパーティデータの入手が困難になりつつあるという課題にどう立ち向かえば良いのか?と相談されることが多いですが、Appierのチーフ・マシーンランニング・サイエンティスト のソウドウ・リン博士は、次のように述べています:最新のAI技術は、「リアルタイム分析」と「スモールデータ予測」ができるようになりました。これは、企業が限られたファーストパーティデータを利用して、ユーザープロファイルの統合を実行し、ユーザー属性推定により、より精度の高いユーザーの行動予測を可能にしています。さらに、ユーザーのプライバシー保護を担保することもできます。
図1:AIモデルを利用してファーストパーティデータから特徴抽出を行い、ユーザーと端末を結びつける
機械学習を使用するAIモデルでは、ユーザー情報やインテリジェント・ユーザー・プロファイルで特定できる匿名ビジターと彼らの行動予測を用い、ナレッジベースを構築し拡張します。ユーザー情報とは、例えば、閲覧端末、所在地、イベント(ブラウザ上で発生した出来事)、キーワード、興味関心、ウェブサイトでの滞在時間などです。AIモデルは、推定マッチングを行い、個人情報を記録せずに包括的なユーザープロファイルを構築することで、特徴抽出を実行します。さらに、コンテンツ嗜好を組み合わせることで、ユーザーの興味関心やキーワードを特定し、ファーストパーティデータを最大化することができます。企業は顧客セグメントを改善し、より一層パーソナライズされたコミュニケーションを実現することができます。Appierの実績データによりますと、データサイエンスプラットフォーム「AIXON」のユーザー推定マッチングの精度は95%に達し、匿名のウェブサイトアクセスを特定することに対し、高い効果を発揮しています。
図2:インテリジェント・ユーザー・プロファイルを用いた、包括的ユーザープロファイルの構築
「ファーストパーティデータの最大化」は、マーケティングを効果的に実施することにつながりますが、企業が継続的かつ効率的に「ファーストパーティデータの価値」を把握しない限り、顧客ベースの拡大および売上の向上は難しくなります。広告、SNSプロモーションおよびメールやショートメールマーケティングキャンペーンなど、従来の顧客獲得手法に加え、顧客とのエンゲージメントおよび対話についても、企業が直接的に活用できるファーストパーティデータです。これらのチャネルは、むしろ、匿名ユーザーを企業のロイヤルカスタマーへと導く、最適な方法であると言えます。
図3:媒体間でのユーザーデータを統合することで、双方向コミュニケーションと、シームレスなユーザー体験を実現
この顧客とのコミュニケーションとは、会員登録、通知の登録、商品へのクリックなど、ウェブサイト上で行われる全てのユーザー行動が含まれています。多くの企業は、マーケティング活動を簡素化して、適切なタイミングでの顧客セグメンテーションを実行でき、またよりパーソナライズされたコミュニケーションを実施するため、Appierの顧客エンゲージメントマーケティングプラットフォーム「AIQUA」のような、AIによるオートメーションツールを導入しています。AIQUAでは、企業がユーザーの行動プロセスを見通し、彼らの行動を明らかにすることが出来ます。メールやショートメールで実施するマーケティング活動の顧客セグメンテーションと、ウェブやアプリのプッシュ通知設定を一つのプラットフォーム上で実行することが出来ます。またこのプラットフォームを他のアルゴリズムモデルと組み合わせることで、パーソナライズされたレコメンデーションの効果をさらに向上することができます。
さて、会話型メッセージというと、LINE、Facebookメッセンジャー、Instagramなど、一般的なインスタントメッセージのアプリがあります。ユーザーがチャットボットや、インスタントメッセージのアプリを通して企業と接点を持とうとする場合、その企業やブランドに興味があるか、何か質問したいか、またはサポートを必要としている場合があります。企業はこの機を逃さずに顧客と接点を持つことができれば、ユーザーの体験はより良くなりますし、新規顧客獲得のプロセスを短縮できるはずです。そのため多くの企業では、BotBonnieのような対話型マーケティングソリューションを導入し、顧客とのやり取りを通じて収集したオムニチャネルのユーザーデータを統合することで、先ほど言及したような顧客とのコミュニケーションに活用することができます。さらに、ユーザーとのコミュニケーションや潜在的なビジネスチャンスを逃さない手立てとなります。また、ファーストパーティデータの情報を増やす結果にもなります。Appierが提供しているAIQUAとBotBonnieをうまく組み合わせ相乗効果を得ることで、企業はさらなる付加価値を生むことができるでしょう。
コロナ禍は、企業と消費者のオンライン化を進めています。例えば、「ボビー」という名前のユーザーがいたとします。ボビーはECサイトとネット注文での食品デリバリーサービスを好み、毎月最低でも2回はネットショッピングをしています。以前と比較すると、コロナ禍でのボビーの平均ネット注文金額は、約50,000円増えました。また、LINEなどのインスタントメッセージアプリに費やす時間も、週1時間増えました。多くの企業がボビーの関心を引くため、メールやショートメール、アプリプッシュ通知、ウェブプッシュ通知を使い、さまざまな媒体からプロモーション情報を流して、アプローチしようとします。しかし、データの統合が行われていないため、それぞれの媒体ごとに、ボビーは新規ユーザーとして分類され、ボビーのユーザー行動をトラッキングすることや、過去に何を購入しているかを特定することが難しい状況です。と同時に、ボビーは、企業からの重複した通知や実際のニーズに合わない通知を受信して困っています。
図4:様々な媒体での「ボビー」のユーザー行動をトラッキングすることで、ユーザー中心のオムニチャネルマーケティングを実現する
前述の課題は、企業が効果的でないトラッキングをしてウェブサイト訪問者の行動比較を行い、複数のプロバイダーによって採択された別々のテクノロジーを使っている結果です。異なる媒体のユーザー行動をトラッキングし、より正確な顧客コミュニケーションを実施するために、媒体間のデータ統合が必要となります。AppierエンタープライズソリューションセールスVPの エリック・リー氏は、次のように述べています:Appierのユーザー中心のソリューションは、AIテクノロジーを利用して、媒体間の構造化行動データ(エンゲージメント記録)と、非構造化行動データ(対話記録)を統合することで、インテリジェント・ユーザー・プロファイルを作成し、匿名端末行動の属性および潜在行動を特定できるようになります。企業がAIQUAとBotBonnieのソリューションを一緒に導入することで、様々な媒体間のデータ統合とパーソナライズされたマーケティング活動をできるばかりではなく、プロダクト連携による機能の組み合わせによって、ユーザーのニーズを24時間対応することも出来るようになります。また、AppierのAiDealサービスを付け加えることで、購入を躊躇っているユーザーを特定し、プッシュ通知またはインスタントメッセージアプリで背中を押すことにより、購入プロセスを進めることが出来ます。
エコノミスト誌によりますと、コロナ禍は、インスタントメッセージの利用を加速させました。Instagram、Facebookの写真共有アプリ、Messengerのメッセージ配信量が40%増え、モバイル端末の使用時間の4/5は、メッセージンアプリに費やされています。対話型コミュニケーションは常に売上促進のカギとなります。マーテックの登場により、作業の自動化で労働負荷の軽減が期待できるため、企業は店頭販売からオンライン販売への移行を進めています。今の時代は、対話型コミュニケーションソリューションを用いることで、LINE、Instagram、Messengerなどのアプリが、オンライン販売での対話型顧客コミュニケーションを強化してくれます。WeChatと同様に、対話型コマースで、徐々にこれらのプラットフォームでの足固めをしていきましょう。
Appierは、メッセージプラットフォームから企業のサイトにアクセスし、会話サービスを使って商品の購入をするユーザーが日に日に増えていることを、確認しています。一部のユーザーは、パーソナルアシスタントのような、購入プロセスが終わるまで、段階ごとにガイドしてくれる双方向対話型マーケティングサービスをむしろ好んでいます。長年、企業の対話型マーケティングサービスの導入に関わったBotBonnieプロダクトリードの ロイ・ロー氏は、次のように述べています:対話型マーケティングサービスは、もはやカスタマーサービスやアフターサービスの役割を果たすだけでなく、より積極的かつ直感的に、双方向的のコミュニケーションに重要な役割を果たしており、「顧客ロイヤリティ維持」をサポートするだけでなく、「対話型コマース」や「SNS型販売」の機会の橋渡しもしています。
図5:対話型マーケティングサービスによる顧客ロイヤリティ維持およびSNS型販売促進
対話型マーケティングサービスに対する、3つの主要な市場ニーズ:
図6:対話型マーケティングサービスに対する、3つの主要な市場ニーズ
過去2年の市場の急激な変化により、マーテック業界は技術のターニングポイントを相次いで迎えています。企業はもはや、個々のプロモーションでより高い投資収益率(ROI)やコンバージョン率(CVR)を求めるだけでなく、異なるマーテックツールを併用することで、製品連携による相乗効果を最大化し、長期的な効果をもたらすことを最優先するようになりました。このような変化から、マーテックのエコシステムは今後、より包括的な垂直・水平統合を遂げることが予測されます。垂直的には、カスタマージャーニーマッピングを実施し、水平的には、パーソナライズされたコミュニケーションやレコメンデーション技術のサービス提供を拡大することが可能です。これにより、様々なツールの相互活用が進み、デジタル競争の突破口となり、また、オムニチャネルマーケティング戦略を実行することで、消費者を惹きつける機会を増やすことになります。これは、Appierが考える次世代の顧客サービスの鍵となり、より差別化されたソリューションを提供し、プロダクト連携で実現する相乗効果を発揮していきます。