人工知能(AI)は間違いなく、今日最も話題になっている技術の1つですが、話題になるにはそれなりの理由があります。計算能力、処理性能やストレージの進歩、そして新しいモバイルおよびクラウド技術によって生成された膨大な量のデータ、それらがすべて重ね合わさり、現在AIという分野でかつてのルネッサンスのような革命が起こっているのです。
一方、こうした要因の重ね合わせは、山のようなデータを生み出すだけでなく、すべてを理解しようとする企業にとって頭痛の種にもなっています。Appierでは、2012年の創業以来、アジアで無数の匿名デバイスプロファイルをデータベースとして蓄積してきました。その数は現在も増え続け、AIの学習に応用されています。これらのデータは、この地域のクロスデバイス利用動向に関し、有益なインサイトを提供してくれるものです。
本日は、Appierが1.8兆以上のキャンペーンデータポイントを分析し、先日発表した 『2016年下半期クロスデバイス利用動向調査』から、ハイライトを共有したいと思います。
企業にとってこのレポートの主要なポイントの1つは、消費者のデバイス間にわたる行動を理解することの重要性です。消費者によるデバイスの利用パターンが複雑なため、マーケターが従来の技術を使用して消費者にリーチすることが難しくなっています。この課題に対しAppierでは、AIを活用することで、膨大なデータポイントを高速に処理し、パターンを検出、さらに将来の行動を予測することが可能になっています。
ここでは、調査で明らかになった重要な傾向をいくつか紹介します。
アジア全体のインターネットユーザーのうち、51%が2台以上のデバイスを所有しています。しかも、その半数以上が4台以上のデバイスを定期的に切り替えて使用しています(全ユーザーの26%)。複数のデバイスを利用しているユーザーを地域別で見ると、台湾がアジアで一番多く、その40%が4台以上のデバイスを利用しています。次にオーストラリアと日本(29%)、シンガポール(28%)、香港(27%)という順になっています。
アジアにおけるモバイルの重要性について多くの話を耳にしますが、当社のデータが明らかにしているように、シングルデバイスという視点では、アジアのユーザーがオンラインでどのように行動しているのか、その全体像を見ることができません。ユーザーの動向を完全に理解するには、クロスデバイスという視点が不可欠になります。
モバイルを常に触っている人が多いアジアでさえ、昼間の時間帯に限っては、モバイルよりもPCからウェブサイトにアクセスするユーザーの方が多いのです。しかし夜になると、この傾向が逆転します。正確には、PCからのページビューは14時から15時の間が最も多く、モバイルからのページビューは21時から22時の間にピークを迎えます。
このレポートが明らかにしているもう1つの重要なポイントは、アジアのユーザーがオンライン広告に対し、利用しているデバイスによって異なる反応を示すことです。平均して、79%のユーザーが複数のデバイスにわたって若干または完全に異なる行動をとっています。そのうち、35%が完全に異なる行動を見せています。また、このユーザー行動には地域によって大きな違いもあります。韓国は88%が完全に異なるという結果になり、最も多様な行動をとっていますが、反対に香港は51%という結果になっています。
デバイス間のデータを分析することで、利用動向に関する全体像を把握することができ、効果的なマーケティングキャンペーンの計画が可能になります。こうした詳細な分析は、マーケターにとって重要なことですが、企業の他の部門にとっても有益です。たとえば、人事部門がAIを活用することで、人員の補充が必要と思われる最適な部門を判断し、その部門の満足度を向上させることや、人事部門が求める主要なスキルを特定することが可能になります。
当社のデータでは、クロスデバイスによるキャンペーンの方が、単一のデバイスによるキャンペーンよりもつねに高いパフォーマンスになることを示しています。ベトナムでのクリックスルー率は、クロスデバイスによるキャンペーンの方が54%も高く、オーストラリアでは53%も高い割合になっています。また、インドでは48%、台湾では36%、香港では27%、日本と韓国では19%という結果になっています。
クロスデバイスを使ったキャンペーンにAppierのAIプラットフォームを活用することで、マーケターにとって重要な情報である最終コンバージョンデバイスを正確に特定することができます。アジア全体では、スマートフォンが最終コンバージョンデバイスの46%を占めています。このデータでも、他のデータと同様に、国によって大きな違いを見せています。
PCが最も多い最終コンバージョンを占めているのは、オーストラリア(71%)、インド(41%)、マレーシア(44%)、ベトナム(41%)です。一方、その他の国ではすべて、スマートフォンが最終コンバージョンデバイスの上位を占めており、香港(48%)、インドネシア(64%)、韓国(62%)、シンガポール(53%)、台湾(48%)という結果になっています。
データ量が豊富であればあるほど、キャンペーンが成功する可能性も高くなります。われわれの調査では、2台のデバイスキャンペーンよりも、3台のデバイスキャンペーンの方が160%も多くのコンバージョンを得られるという結果になっています。
Appierでは、未来の行動を予測することが、AIがもたらす最大の恩恵の1つであると考えてきました。何年にもわたって蓄積してきた豊富なデータセットを包括的に分析することで、ターゲットオーディエンスの行動を詳細に、かつ正確に予測することを可能にしています。
現在Appierが取り組んでいる画期的なプラットフォームの1つがAixon(以下、アイソン)です。データ・インテリジェンス・プラットフォームであるアイソンを活用することで、さまざまな企業のマーケターは、新規顧客の開拓、カスタマー・ニーズのさらなる理解、そしてAIによる行動の予測が可能になります。
アイソンは、企業が取り組む、次のような目的に利用することができます。
* オンライン購読者を増やしたいニュースメディアは、潜在的な購読者をオンラインで特定することがきます。
* ユーザーが興味を持っている話題を調べたいマーケターは、データを分析し、得られたインサイトを自社のCRMシステムに組み込み、コンテンツ戦略を最適化することができます。
* オンライン販売やコンバージョンを増やしたいeコマース事業者は、サイトのデータを分析し、オンライン購入の可能性が最も高いユーザーを予測することができます。
* モバイルアプリ開発企業はアプリをアンインストールする可能性のあるユーザーを特定し、リエンゲージメント対策を計画、実行することができます。
* 広告在庫の価値を高めたいオンラインメディアは、サイトを訪れるオーディエンスに関する、より詳細な分析を潜在的な広告主に提供することができます。
アジアの消費者動向に関するさらに詳しい情報は、「クロススクリーンレポート」に掲載されており、当社のWebサイトからダウンロードすることができます。また、ビジネスにAIが果たす役割について詳しく知りたい場合は、Appierにお問い合わせください。われわれは過去5年間、AIを使ってアジアの複雑なクロスデバイス利用動向を分析し、その結果を発信しています。Appierは、今後将来に渡って企業がAIをこれまで以上に より多くの場面で利用するだろうと考えています。
編集部より:Appierでは当社のリーダーシップチームや業界のオピニオンリーダーたちが執筆する企業向け人工知能(AI)に関する考えなどを発信していく予定です。当ブログを転載または転用する場合は、press@appier.comまでご連絡ください。