新型コロナウイルス感染症の対策がとられるようになり、世界中のレストランやバーなどの飲食店は、再び営業を開始しています。マーケットによって許されている営業時間は異るものの、収容してもよい最大人数の制限、テーブル間の距離を1.5メートルに徹底することや入店時の体温測定といった、各国の政府が施行しているソーシャルディスタンスに関する規定は似ています。
感染症の拡大が始まってから変化した消費者の行動は、ソーシャルディスタンスを前提としたニューノーマルという形で今後も定着しそうです。人々は外食を避ける一方で、自宅で調理したりテイクアウトをしたりするので、テイクアウトや出前の数字は伸び続けています。
飲食店業界向けのマーケティング・PR企業のHunterが実施した 調査 によると、自宅で調理するアメリカ人は 感染症の拡大前と比べ、54%上昇したことが判明しました。さらにイギリスで実施した調査では、調査に参加した18-24歳の60%が食品のデリバリーの利用頻度を増やしたと答えた一方で、調査に参加した35-54歳の40%が、今後、食品デリバリーの利用頻度を増やす予定であると回答しています。
同時に消費者は、食品に対して衛生や健康面・免疫システムへの影響を意識したり、できるだけ地元でとれた食品を選んだりという傾向が強くなっています。
新しい時代を生き抜き、かつ感染症の拡大から立ち直るには、飲食店業界は変化に対応しつつ、柔軟に戦略を変更する必要があります。以下、ご参考にしていただける戦略を紹介します。
1) テイクアウト・出前のデジタル管理
テイクアウトや出前が好まれる風潮の中で、飲食店はデジタル化および物流管理に備える必要があります。経営しているレストランであれバーであれ、オンラインで受注できるか、あるいはソーシャルメディアチャネルと連携するアプリがあるかどうかを確認してください。
ウェブサイト、アプリやソーシャルページにオンライン受注ポータルを追加し、POSと決済ポータルに連係することで電話対応のストレスを軽減できます。メニューや価格、テイクアウトや出前の選択、来店してピックアップする場合や配達に関わる規定などを一緒に載せます。
Deliveroo、Uber Eats、GrabFoodやfoodpandaなどの食料配達サービスとパートナーシップを組むのも良いかもしれません。シンガポールでは GrabFood が、1月から4月にかけて新たに1,500件以上の飲食店を、そのプラットフォームに取り込みました。こういった食品デリバリーサービスは注文や決済や配達の管理をしてくれるだけではなく、より多くの顧客へのリーチを可能にしてくれます。
2) リアルタイムの顧客インサイトの活用 飲食業界の顧客行動および嗜好は常に変化します。今日のお客様を満足させられればレストランは成功であるとは言えないのです。そのお客様が明日、なにを食べたくなるのかもあわせて予想しなければなりません。
機械学習を利用してオウンドデータおよびサードパーティーデータのリアルタイムの顧客行動を元にインサイトを生成すれば、お客様がしている注文から、現在のトレンドおよび嗜好を特定できます。また、自社のウェブサイト外での消費データから、需要のアップダウン、特定の食べ物や飲み物の需要を的確に把握できます。
このようなインサイトは、メニューや食事の楽しみをパーソナライズすることができ、顧客維持の向上やアップセルにつながります。例えば、現在多くの顧客は免疫システムに良い食品を探しているので、健康的な選択を増やすことで顧客の注目を集めることができます。また、材料の管理がより正確になるため、フードロスを抑えることができます。
3) デジタル広告を活用した新規顧客の獲得
現時点では新規顧客の獲得は厳しいと思えるかもしれませんが、完全にあきらめるのは早計です。
新型コロナウイルス感染症によって、 1,000インプレッションあたりのコストおよび1クリックあたりのコスト は減少しましたが、つまり以前と比較してより低いコストで同じオーディエンスの量をターゲットできるということでます。まだマーケティング予算の調整にはためらいもあるかもしれませんが、スマートなデジタル広告によるROIは狙い目です。特に現在は、かつてないほどオンライン利用者数が増加しているのです。
成功のカギは、正確なターゲティングです。AI搭載の広告プラットフォームを使用することでファーストおよびサードパーティーのデータを利用し、ルックアライクオーディエンスを特定して、それらの興味関心および行動を元にセグメントを識別することができます。また、ディープラーニングを活用した予測や、各セグメントのコンバージョン率に基づいた格付けによって、コンバージョンする可能性のより高いグループをターゲットすることができます。
広告の整合性にあわせて、Deliverooの #HereToDeliver キャンペーンのように、メッセージをよりクリエイティブにしましょう。また、それらを利用してオンラインで調理デモのような広告ライブイベントを実施することで、より親近感が向上します。
4)プロモーションをよりスマートに
誰でも特典や割引が大好きです。特に、こういった経済的にも厳しい状況であればなおさらです。プロモーションやクーポンを活用することで、一層顧客の興味を引くことができます。
キャンペーンの効果を最大化するには、高度な機械学習を活用してウェブサイト上の顧客行動を分析し、クーポンや特典を利用する可能性の高い顧客、いわゆる「決めかねている」顧客を特定することです。このことでクーポンの使用率や、ROIの向上が見込めます。
Appierのウェブ接客ツール AiDeal (アイディール)を採用した ピザハット台湾 で は、キャンペーン期間中のクーポン使用率が17%増加しました。キャンペーン開始後の翌週には、機械学習の精度が向上したことでより精度の高いインサイトが導き出され、コンバージョン率は6-8%上昇しました。
成功のカギは適切な顧客にクーポンを提供すること、また、そのオファーや割引が、オーディエンス向けに適切にカスタマイズされていることです。また、オファーには例えば、入手後1時間内に利用するなどの時間制限をつけることも大切です。
5) さまざまなチャンネルを横断した顧客コミュニケーション
世界中がソーシャルディスタンスを前提としたニューノーマルに否が応でも対応せざるを得ない現状で、かつてないほどウェブサイトやソーシャルメディア、メールやアプリといった多様なオンラインチャネルを横断した顧客とのコミュニケーションが重要になっています。
もしまだあなたのビジネスがシャットダウンされていたとしても、打つ手はあります。メッセージを配信し続けることで自社を印象付け、再開したときにはまたあらためて、顧客を勝ち取ればよいのです。
メッセージにはテイクアウトや配達オプションのアップデート情報、メニューの変更や営業時間、ディナータイムの開始時間などを忘れずに入れておきましょう。また、衛生やソーシャルディスタンス対策も明示するとより効果的です。
また、最新のデータおよびインサイトを元にした関連性のあるコンテンツを顧客に提供しましょう。例えば、調理動画や健康の秘訣やレシピ、または最新のおススメ情報といったコンテンツが考えられます。コンテンツに幅を持たせることで、エンゲージメントの向上を目指します。ライブ動画を上げたりSNSでコンテストを実施したり、インスタ映えする料理をアップすることも有効です。
ここでご紹介したデジタル戦略の活用が、アフターコロナに対処するだけではなく、将来にわたっても飲食業界で勝ち残ってゆく参考になれば幸いです。
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