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旅行業界における競争が激化する中、旅行業界のマーケターが安定的な事業の成長を持続させるには、既存顧客とのエンゲージメントを強め、顧客内シェアを増やさなければならない。これらの課題を解決するための、人工知能(AI)を活用したパーソナライゼーションの実践方法を紹介する。
旅行者にワンストップで完了するオンライン予約が人気だ。一方で旅行代理店の役割が曖昧になってきた。総合的な旅行サービスを提供するオンライン旅行代理店を利用しなくても、航空会社やホテルのウェブサイトで簡単にレンタカーやオプショナルツアーを探せるようになったからだ。そのため、旅行代理店にとっては、フライトやホテルを検索して予約する新規顧客の獲得だけが課題ではなくなった。既存顧客の利用回数を増やし、顧客内シェアを拡大する必要が高まっている。そのためには、顧客の興味・関心・好みを十分把握し、その情報を活用したエンゲージメントとリテンション戦略が重要となる。この戦略が成功すれば、投資回収率の上昇と持続可能な成長を実現できるだろう。
旅行業界のマーケターが顧客のエンゲージメントとロイヤルティを確立する方法の一つとして、パーソナライズされた商品のレコメンデーション(おすすめ)が挙げられる。ボストン・コンサルティング・グループによると、 顧客体験のパーソナライゼーションを実施するブランド( 英語資料 ) は収益の6~10%増を達成でき、これはパーソナライゼーションを実施しない企業の2~3倍の成長率になるという。
AIは、あらかじめ決められたルールではなく、過去の顧客データから得たインサイトに基づいてパーソナライズした特定の顧客向けのおすすめ情報を生成することができる。AIソリューションは、顧客と企業とのこれまでの関係に基づき、カスタマージャーニー、オンライン行動、購入パターンに関するデータをまとめ、パターンを分析して未来の顧客行動を予測する。そしてそれが、顧客が購入する可能性が高い商品のおすすめ情報の作成に有効だ。
先を見越したターゲティングで顧客内シェアを拡大
最近では、Appierの AIQUA(アイコア)などのAI搭載のカスタマーエンゲージメントプラットフォームが、機械学習を利用し、これまで以上に具体的できめ細かいパーソナライゼーションを可能にしている。旅行会社がアイコアを利用すれば、自社のプラットフォームを通じて収集した消費者データだけでなく、自社のアプリやウェブサイトを使ったことのない消費者の総合的なデータも収集して分析することができる。それによって、顧客の興味関心分野、嗜好、さまざまなプラットフォームでのショッピング行動が明らかになる。こうして得たインサイトを活用し、顧客の興味関心に合わせてマッピングすれば、高度にパーソナライズされたおすすめ情報を提供できるようになる。
結果として、コンバージョン率が上昇し、購入までの時間が短縮され、収益率を向上させることに繋がる。例えば、あるユーザーがhappytravel.comで北京行きのフライトを予約し、asiatours.comでツアーパッケージを検索したとする。この場合、happytravel.comがAIを利用すれば、他のウェブサイトにおけるこのユーザーのショッピング行動を分析し、興味関心を持っている他の旅行関連商品や、コンバージョン率向上のための要因を特定することができる。このデータを活用すれば、ユーザーを特定して細かく分類し、関連性の高いパーソナライズされたおすすめ情報を多様なデバイスに提供できる。
こうしたAIソリューションの導入によって、適切なチャネルを通じて、適切な顧客と商品でリーチすることができ、コンバージョンの可能性を高められる。パーソナライズされた適確なおすすめ情報を提供すれば、旅行者のオンライン予約や購入体験を円滑にし、顧客ロイヤルティの確立につながる。旅行者は、検索に過度な時間を取られることなく、必要な情報を探して手続きを終えることができる。一方で旅行会社は、購入までの時間を短縮してコンバージョンを高めるとともに、顧客の興味関心に沿ったアイテムを販売する力を得られる。