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企業の成功の目安には収益、ブランド力、人材、そしてマーケティングが挙げられる。なかでもマーケティングの進化のスピードは早く、人工知能(AI)を活用したマーケティング手法を導入する企業も増えている。AIが得意とするパターン認識、予測分析機能に加え、AIによるマーケティングは今や精度の高いパーソナライゼーションを可能にし、キャンペーンのレベルを向上させている。
マーケティングにとってパーソナライゼーションは不可欠
多くのブランド企業が、すでにマーケティング自動化ツールを活用したメッセージのパーソナライゼーションを始めている。オンラインマーケティングでは、ほぼ個人ベースの、非常に特化したターゲティングが可能だ。見込み客は、ソーシャルメディア、ショッピングサイト、検索エンジンを通じて、関心を表す足跡をインターネット全体に残していく。そのデータを使って企業は具体的な利益を伴う、より優れたマーケティングキャンペーンを考案することができるだろう。
今日のマーケティング自動化(MA)ツールの課題
コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーは、小売、旅行、エンターテインメント、通信、金融サービスなどの企業が大規模にパーソナライズしたプロモーションキャンペーンを行うと、収益を5~15%増大させることができると 試算している。調査に回答した小売業の90%以上はパーソナライゼーションを最優先事項と考えているという。しかし、パーソナライゼーションを実際に活用しているのは、そうした企業のうち15%にすぎない。
マーケティングの価値は、メッセージを適切な人々に確実に届け、購買を促し、収益に貢献すること。ターゲット・オーディエンスをより詳しく把握し、彼らの行動や嗜好に合わせた施策をしてこそキャンペーンに対する投資からリターンを得られる。ベジタリアンに新しいステーキハウスの話をしたり、バックパッカーに高級リゾートを宣伝したりするのでは意味がない。
今日の多くのマーケティング自動化ツールでパーソナライゼーションを実現するための最大の制約は、 利用可能なデータが不足していることだ。参照するデータの量が少なかったり、収集しているデータに欠落している項目があれば、パーソナライゼーションの精度は低下し、効果も薄れる。
例えば、あるひとりのユーザーが、パソコン、スマートフォン、タブレットで企業のサイトにアクセスするとする。従来のパーソナライゼーションツールだと3人の異なるユーザーがサイトを閲覧していると報告する。この方法だと断片的な情報しか得られないため、このユーザーのカスタマージャーニー(顧客が購入にいたるプロセス)に関する貴重な情報を見逃してしまうことになる。
また、従来のマーケティング自動化ツールは、人間の行動や感情をつねに正確に理解することはできない。ツールは、「人は一度商品を購入したら同じ物はもう買いたくないだろう」といった誤った判断をすることがあり、それがユーザー行動に関するデータを十分に入手できない原因となっている。
企業が直面しているもう一つの課題は、マーケティングの取り組みを拡大した場合、 複数のチャネルを通じて行われる顧客とのエンゲージメントを管理するのが難しいということだ。その原因の一つは、すべてのチャネルをカバーするのに必要なツールが多過ぎる上、それらのアップデートは多額のコストを要するか現実的ではないということだ。異なるツールを導入すると、マーケティング担当者が見ているものの間でのコミュニケーションが不足し、迅速で効果的な対応ができなくなる。
AI がもたらす真にパーソナライズされたマーケティング
AIを活用してブランド企業のマーケティングキャンペーンを強化させる方法は数多くある。中でもAIは特定の顧客に着目してキャンペーンを展開する際に有効だ。
例えば、ある消費者は、EコマースのサイトAでファッション商品をよく購入しているが、サイトBでベビー用品を買っている。こうした購買行動情報をサイトAの運営企業が入手できるようにすれば、この消費者に関連性のある商品や情報を提供することで、この消費者とのエンゲージメントを強化することができるだろう。企業が自社サイトの訪問者について得られる情報はサイト内のアクションに限られる。一方でサイトAの訪問者がどんな人間で、どのような商品を探していたか、何に興味があるのかはAIを活用することで、明らかになる可能性が高い。 AIを活用すれば、ウェブサイトから立ち去った見込み客へのエンゲージメントが容易になる。
例えば、現状のマーケティング自動化ツールでは、サイト上でショッピングカートに商品を入れたままにしている顧客に、カート内の商品についてのリマインドを送付することができる。新型のマーケティング自動化ツールであれば、顧客がその商品に多少なりとも不満を持っていることを予測し、他の商品を勧めるパーソナライズされた提案を添えることができる。 ニュースメールを的確な顧客に配信するケースでもパーソナライゼーションが重要だ。企業が特定の顧客を対象とした商品のセールやプロモーションを行う場合、キャンペーン告知のメールをニュースメール購読者全員に送るのは最善のアプローチとは言えないだろう。企業はこの商品に興味を持ち、買うであろう顧客の購買履歴や趣味嗜好を把握することで、パーソナライズしたメールを配信することができるのだ。