人間の脳に見立てた「人工ニューラルネットワーク」がキーポイント、 AI活用の際には10回テストを
AI(人工知能)テクノロジー企業のAppier(エイピア、共同創業者/CEO:チハン・ユー)のチーフAIサイエンティストであるミン・スンは、どのようにディープラーニングが進化を遂げたかについて、以下の通り発表しました。
昨今、検索エンジンのアルゴリズムの改善に「ニューラルネットワーク」が使われたとの報道もあり、ディープラーニングの社会実装は活発化しております。今回、ミン・スンは、ディープラーニングのこれまでの進化を振り返るとともに、活用に際して提言をいたします。
■ 顔認識を可能にするディープラーニング
コンピュータビジョンとは、ディープラーニングを使用し、対象の物体や画像を見せるだけで、その対象を認識するようにコンピュータに教えることを意味します。従来の「機械学習」を使用した「画像認識」では、特定のオブジェクト(特定数のエッジ、特定のカラーパターン、特定の形状など)を認識するために、何を探すかをコンピュータに教える必要がありました。特徴量エンジニアリングと呼ばれるこのプロセスは、時間と労力を要するにも関わらず、結果はあまり正確ではありませんでした。
しかし、コンピュータビジョンでは、人間がこれらの機能を手動で設計する必要はなく、コンピュータはオブジェクトの特徴的な機能を自動的に学習します。今日、コンピュータビジョンで最も一般的なのが、顔認識です。顔認識を使用すれば、スマートフォンを見るだけでロックを解除することができます。一部の国境警備チームは、パスポートのスキャンと同様に顔認識を使用しています。また、アクティビティを認識することができることから、監視カメラを使用して人々を追跡するためにも使用されます。他に身近な例では、キャッシュレスのAmazon Goで、バスケットに入れる製品を認識するために使用し、アイテムをスキャンせずにいくら請求すればよいかを認識しています。
■ 人間の脳に見立てた人工ニューラルネットワークが、「学習の深さ」を可能にする
上記で説明したコンピュータビジョンは、ディープラーニングを活用することで実現します。ディープラーニングは「機械学習」が進化したもので、意思決定プロセスの数を増やし、「より深い」学習を達成するための手法です。従来の「機械学習」では、ある時点まで到達すると学習が飽和状態となり停止してしまいます。
「より深い」学習を実現するディープラーニングでは、「人工ニューラルネットワーク」というモデルが必要です。「人工ニューラルネットワーク」では、人間の脳がどのように機能するかを模倣しています。人間の脳は、数十億のシナプスを持つニューロンが複雑に接続されて構成されています。人間の知能は、この複雑なニューロンの接続により実現しています。今のところ、人間の脳がどのように機能しているかの全容は解っていないのですが、シンプルなコンポーネントが複雑な方法で接続されて、人間の知能を導いていると推測されます。 現在、複数の層にまたがって複雑な方法で接続する人工ニューロンの開発が進められています。ニューロンを接続する層が多いほど、人工ニューラルネットワークはより深い学習を可能にします。ニューロンを接続する層が多いほど、最終的にはより多くのデータを処理できるのです。
■ AIに100%正確なモデルはない、AIの有用性に迷ったら10回以上テストしよう!
ただ、100%正確なモデルは存在しておらず、AIのエラー率が100分の1であっても、盲目的に信頼するのには注意が必要です。音声認識も100%正確ではないため、認識されたテキストのスペル、文法、同音異義語、表現、文脈について、人間が常にチェックすることが大事です。
AIが導く分析結果は、人間の下した結果が正しいかどうか判断するための参考に留めるべきです。AIと人間が下した判断結果が大きく異なる場合は、人間が下した決定プロセスを再度見直す必要があります。AIに関しても繰り返しのテストを行い、10回テストして人間の判断よりも平均が良い場合、ようやく機能していることが判ります。
とくに、医療診断では、1つの誤った決定が、判断プロセスにもたらす影響が非常に大きいため注意が必要です。そのため、医師の判断は必須であり、エラーの可能性を最小限に抑えるには、時間がかかるとしても人間の介入が不可欠です。
Appier について
Appier は、AI(人工知能)テクノロジー企業として、企業や組織の事業課題を解決するための AI プラットフォームを提供しています。
ミン・スン プロフィール
2005年からGoogle Brainの共同設立者の一人であるAndrew Ng(アンドリュー・エン)氏、 元Google CloudのチーフサイエンティストであるFei-fei Li(フェイフェイ・リー)氏などのプロジェクトに携わり、AAAI(アメリカ人工知能学会)をはじめ世界トップの人工知能学会で研究論文を発表 2014年に国立清華大学の准教授に就任 2015年から2017年には、CVGIP(Computer Vision Graphics and Image Processing)Best Paper Awardsを3年連続で受賞。専門分野は、コンピュータビジョン、自然言語処理、深層学習、強化学習 2018年には「研究者には肩書きよりもデータが必要」と感じ、AIテクノロジー企業AppierにチーフAIサイエンティストとして参画。新製品の開発、既存製品の機能改善のほか、記述的な課題解決を行う 2019年11月8日プレス PDF版