AI(人工知能)テクノロジー企業のAppier(本社:台湾、共同創業者/CEO:チハン・ユー)のCOO兼共同創業者であるウィニー・リーが、昨日2017年3月29日、Slush Tokyo 2017のメインステージに登壇し、「Appierの道のり~ハーバードの学生寮の一室で生まれたアイデアからアジア市場で活躍する企業へ~」と題する基調講演を行いました。Slush Tokyo 2017は、3月29、30の両日に東京ビッグサイトで開催された起業家精神を称える世界的に有名なイベントです。
起業家、学生、ベンチャーキャピタル、業界関係者を含む約5000人が参加するこのイベントのメインステージで、ウィニー・リーは、学生寮の一室で生まれたアイデアから、アジア全域の12都市にオフィスを擁するAI企業へと成長する過程で自らが学んだ5つの重要な教訓について語りました。
本質的な課題に応える
Appierの起業の道のりは、5年以上前、ハーバードの学生寮から始まります。当時、チハン(CEO)と ジョー(CTO)は、AIを使ってソーシャルゲームアプリケーションの開発に取り組んでいました。「この時期は初歩的なレッスンの繰り返しでした。開発したゲーム自体は面白かったのですが、それはユーザーの本当のニーズを満たすことにはならなかったのです。この経験から、われわれは本質的な課題に応えていないことに気づくことができたのです」とウィニーは述べています。チハン、ジョー、ウィニーの3人の共同創業者は、データの解析から導き出される判断や提案を必要とするパートナーに対して彼らの要望を十分理解し、その要望にテクノロジーで貢献しようと改めて決意しました。この意識こそが、2012年の創業にいたるまでに8回以上もの方向転換を繰り返す原動力になりました。
失敗を活用する!
チハン、ジョー、ウィニーは、事業を開始しましたがAppierの業績はまだまだ不安定でした。この時期に得た2つ目の教訓は、敗北を認めて諦めるのではなく、成功に向けてひとつひとつの失敗をどのように活用するかということでした。「私たちは早い段階から、失敗を、効果をもたらす変化や改良に繋がる“ピボット(転換点)”と呼ぶことにしました」と、ウィニーはSlush Tokyoの聴衆に説明しました。「間違いなく、私たちは何度も意気消沈することがありました。また、研究者が経営に携わることに疑問を抱くこともありました。しかしふり返ってみると、幸せなことに、私たちは失敗を受け入れるのではなく、困難を製品の進歩や改善に向けた転換のチャンスとして活用することができました」
いつでも自分のアイデアを売り込む
Appierは、あまり知られていない台湾のスタートアップでありながら、起業当初から、Appierに出資を決定したJAFCOやSequoia Capitalなどの投資会社から数多くの貴重な洞察を得てきました。実は、Sequoia CapitalはAppierにとって最初の国際的な投資家でした。ウィニーは、Sequoia Capitalとの偶然の出会いを、文字どおり「エレベーターピッチ」と表現しています。「台湾に帰国してから1年後、チハンと私はシンガポールオフィスのオープンに向けて社員候補との面談のためシンガポールを訪れ ました。偶然Sequoia Capitalが入っているビルのエレベーターでSequoiaのパートナーに出くわし ました。そしてエレベーターでの出会いによって、その週後半に開催された投資家向けのプレゼン テーションへの参加が決まりました」ウィニーは、Sequoiaとの出会いには少し運があったと認めつつも、「機会はいつ訪れるか分からないので、常に準備ができていることが重要であると、この経験は明らかにしています」と言っています。
壮大なアイデアをもってグローバルを目指す
Appierは、現在アジアの12の市場でビジネスを展開しています。ウィニーは、Appierがグローバルを目指して拡大する理由にはAppierの創業者が生まれ育った台湾の伝統的な考え方と、今日の世界市場の流れに乗ることに根差していると説明しています。「Appierは、台湾企業として多くの地理的な課題を経験しました。台湾は国内市場の小さい国であり、それゆえ多くの台湾人や台湾企業は、自分たちの 強みを生かせる海外事業に常に目を向けてきました。しかし、インターネットの速度と規模ですべてが動いている今の時代、それだけでは十分ではないと気づきました。すべてのスタートアップは、『壮大なアイデアをもってグローバルを目指す』必要があります。創業当初から、AppierのDNAにはこの考え方が根付いており、そのおかげで、アジアの12の市場で200人を超える人々による事業展開をわずか4年のうちに実現できたのです」
多様性にあふれた人材を集める
アジア全域の12の市場にわたるチームを構成するにあたってウィニーが重要だと考えている点は、地理的出自と人生経験の両面で多様性を追求することです。従業員に多様性が重要なのは、台湾に戻ってアジアでビジネスを行うという創業者たちに、決定的な影響を与えました。「私たちは、Appierに革新と急成長もたらしてくれる、多様で可能性にあふれた若者がアジアに眠っていることを知っていました」とウィニーは説明しました。「Appierという環境の中で、彼らが起業家のように考え、振る舞えることが重要です。失敗を糧にして前に進むというAppierの文化に立ち戻り、失敗しても差し支えないと、私たちのチームに知ってもらいたいのです。私たちは、誰もが主導権を取り、誰もが恐れることなく大きな考えを持ってほしいのです」とウィニーは力説しました。
Slush Tokyo 2017について Slush Tokyo(前Slush Asia)は今年で3回目を迎える起業とテクノロジーの祭典です。2017年のイベントでは起業家、投資家、メディア、学生を含めた5,000人以上の来場者を見込み、ゲストスピーカーとして約60人の著名人が登壇します。他にも、参加企業やスタートアップによるデモ展示、スタートアップ80社によるピッチコンテストが開催されます。また、投資家とスタートアップの懸け橋となるようなマッチングシステムを導入し、スムーズにミーティングができるエリアを提供します。
Appierの共同創業者兼COO ウィニー・リーについて ウィニー・リーは、台湾、米国で免疫学を学び、免疫学分野において10年の経験を有しています。リーはハーバード大学医学大学院のボストン小児病院でリサーチテクノロジスト(研究技師)職に従事していました。ワシントン大学で免疫学の博士号を、スタンフォード大学で生物学修士号を取得しました。スタンフォード大学では、Nature誌に掲載された4つの論文を含む一流のジャーナルで数多くの寄稿記事を執筆しました。彼女の研究は、1,000件を超える論文や記事で引用されています。