多国籍なメンバーが活躍するAppierでは、「ダイレクトコミュニケーション」「オープンマインド」「アンビシャス(向上心)」という3つのバリューを大切にしている。オープンでフラットな社風をもつ同社の広々としたオフィスでは、社員たちがフレキシブルにのびのびと仕事をしている。
ヘッドオブジャパン(日本代表)兼財務担当シニアバイスプレジデントの橘 浩二さんと若手社員の皆さんに、国境にとらわれない同社の組織の特徴や、事業の未来について話を聞いた。
今回インタビューでお話を伺った橘さん
アジア発グローバルへ「AIの民主化」を目指すAI x SaaS企業
—Appierの事業内容や、ビジョンについて教えてください。
橘さん(以下、敬称略):私たちは、AIを活用して顧客のマーケティング課題を解決する、アジア発のSaaS(Software as a Service)企業です。主にデジタル領域で事業を展開するBtoC企業を対象に、お客様の抱えるマーケティング上の課題に対し、個別にフィットするソリューションを提供しています。
Appierは、「AIをもっとシンプルに ソフトウェアはよりスマートに」というビジョンのもと、「AIでROIを向上させる」というミッションを掲げています。現在、世界的なビッグ・テック企業のサービスを通じて最先端のAI技術の恩恵を受けていますが、私たちが享受できるサービスの範囲は限定されています。Appierでは、専門知識がなくとも、誰でも簡単にAIを使える「AIの民主化」を実現したいと考えているのです。
将来的には、すべてのソフトウェアにAIが組み込まれ、ソフトウェア自身が物事を判断する時代が来るでしょう。私たちが最先端のAIを使ったソリューションを提供することで顧客の事業が成長し、多くの人がAI技術の便益を享受することができる。そんな社会の実現を目指しています。
—具体的には、どんなサービスを展開していますか。
橘:企業のセールス・マーケティング活動の領域で、大きく分けて4段階のソリューションを提供しています。1つ目は、ターゲットとなる顧客やユーザーがどこにいるかをAIで予測し、獲得する「CrossX」や「AIXPERT」。2つ目に、エンドユーザーが何に興味があるかを予測し、最適な媒体で顧客とのエンゲージメントの質を向上する「AIQUA」と「BotBonnie」。3つ目に、商品を購入するかどうか迷っているユーザーを特定し、彼らだけに割引クーポンなどのインセンティブをプッシュ通知などで表示する「AIDEAL」。そして最後に、ユーザーが次にいつ、何を買うかなど、将来の消費行動を総合的に予測し適切な マーケティング戦略を立てるためのデータを提供する「AIXON」や「AIRIS」です。
拠点は世界17カ国。アジアからグローバルなプロダクトを生み出したい
—創業の経緯についても教えてください。
橘:CEOのチハン・ユーは、台湾大学を卒業後、スタンフォード大学やハーバード大学のAI関連の研究者として米国でキャリアを積んでいました。AIを使い機械やロボットの自動制御や自動車の自動運転を専門に研究していたのですが、ある日、研究所に向かうためにハンドルを握り車を運転していた際、「10年間AIの研究をしていても、自動運転の技術は限定的な範囲でしか実用化されていない」と気づいたそうです。そこで、世の中にインパクトを与える事業を起こしたいと一念発起し、2012年、仲間と共にAppierを立ち上げました。
—10年あまりで、世界各国に拠点を広げています。
橘:2014年、アジア地域を皮切りにグローバル展開をスタートし、2020年にはアメリカ、ヨーロッパにも拠点を開設しました。現在は世界17都市に拠点を持ち、1400社以上の企業のDXをAIの技術で支援しています。顧客基盤の拡大を背景に、売上は高成長を続けており、2021年に東証マザーズ上場、2022年には東証プライム市場に移行しました。
欧米市場に弊社のプロダクトを投入し始めたのは今から約2年前ですが、Appier Group全体の売り上げ収益に占める米国およびEMEA(Europe、the Middle East、Africa)からの収益割合は0%から14%まで急拡大しています。Google、Appleなど多くの優れたプロダクトがアメリカから発信されていますが、私たちはアジアから、世界中で使われるプロダクトを生み出したいのです。
多国籍なメンバーが在籍。大切にしている3つのバリュー
—組織づくりで、大切にしていることはありますか。
橘:「ダイレクトコミュニケーション」「オープンマインド」「アンビシャス(向上心)」という3つのバリューを掲げています。グローバル展開が進む中、現在は25〜30カ国のメンバーが在籍しています。社内共通言語として英語を使っていますが、母国語が英語ではないメンバーも多いです。そういった環境の中、相手が本当に伝えたいことは何か、オープンな気持ちでメッセージを受けとめることを大切にしているのです。
世界中の拠点に人材が分散しており、例えばある分野のセールスについてはシンガポール、別のプロダクトの統括は日本、というように、優秀な人材がいる地域をコアに組織を作っていくという新しいチャレンジをしています。
—今後、どのような人材を迎えたいと考えていますか。
橘:これら3つのバリューに共感できる方とは、ぜひ一緒に働きたいですね。日常的に英語を使える多様性のある環境に身を置きたい、国に縛られずグローバルなプロジェクトに関わりたいと考えている方にとっては、刺激的な経験ができるのではないでしょうか。
—社会貢献や環境保護に関する取り組みについても教えてください。
橘:持続可能なビジネスをグローバルに展開していく上で、ESG(Environment、Social、Governance)をビジネスに組み込むことは欠かせないと考えています。環境への配慮や、多様性・公平性・包括性をコアバリューとする人材育成、ガバナンスに対する取り組みが評価され、ESG投資の世界的な評価指標であるMSCI ESG レーティングで「A」という高評価を得ています。セキュリティやプライバシーについては、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格のISO27001とISO27701の認証も取得しています。
オープンマインドな雰囲気の中、フレキシブルに働く
—ここからは、Appierで活躍する若手社員の皆さんにもお話を聞いていきたいと思います。林婉慈 (Jasmine Lin)さんは、現在どんな仕事をしているのでしょうか。
林さん(以下、敬称略):AIDEALの部署で、シニアキャンペーンアナリストとして働いています。データを分析してサービスのパフォーマンスを維持したり、システムに何か問題が起こった際、他のチームとコミュニケーションをとりながら課題解決に導いたりすることが私の役割です。
—社内はどのような雰囲気ですか。
林:オープンマインドな人が多いですね。やりたいことがあれば、上司や同僚と率直に話し合い、実現できる風土があります。プロダクトをより良くするという共通の目標に向かって、営業やエンジニアを含め、積極的なコミュニケーションをとるよう心がけています。
—普段はどんな働き方をしているのでしょう。
林:当社ではフレックスタイム制を取り入れていて、コアタイムは10時半から3時半です。月単位で労働時間を調整でき、裁量が大きいので、仕事量に波があるときにも働きやすいですね。
上司が海外にいても、困り事があればすぐに相談できる
—川口尚子さんは、8カ月ほど前に入社されたそうですね。
川口さん(以下、敬称略):エンタープライズソリューションという部署で、シニアテクニカルコンサルタントという役割を担っています。お客様が直面するテクニカルな問題を解決することが仕事です。
—Appierに入社して、印象的だったことはありますか。
川口:海外からCEOが来日した際、「何か困っていることはある?」と直接声をかけられたときには驚きました。私の上司は台湾にいて、自由に仕事をさせてもらっているのですが、相談したいことがあるとすぐに時間を作ってオンラインで相談にのってくれるので、安心して仕事ができています。
デジタルネイティブ世代のメンバーが多く、デジタルコミュニケーションツールに苦手意識のある人が少ないのも特徴です。自律的な働き方がしたいと考えている方にとっては、理想的な環境ではないでしょうか
—オフィスの環境についても教えてください。
川口:個人の席はそれぞれ決まっているのですが、カフェコーナーやソファエリアもあり、みんな自由に移動しながら働いています。電話会議などに使える一人用のブースや、世界各国のメンバーと大画面でミーティングができる会議室などの設備も充実しています。
国境を超え、新たな価値観を学べる環境自体が「福利厚生」
前田奨平さんにもお話をうかがいたいと思います。まずは、担当業務を教えてください。
前田さん(以下、敬称略):広告ソリューションの部署で、アカウントマネジメントを担当しています。顧客との取引をマネジメントするのが私の担当です。台湾の運用チームやエンジニアチームとやりとりをすることも多いです。
—Appierの評価制度について教えてください。
前田:3ヶ月ごとに、2つの視点から評価が行われます。1点目は定性的な評価。Appierの3つのバリューに沿った行動ができているかどうかを判断します。2点目は定量的な評価です。OKR(Objectives and Key Results)に基づき、目標達成度を評価します。チームのメンバーを見ていると、若くても管理職に抜擢されるなど、パフォーマンスに応じて適切に評価される会社だと感じています。
—福利厚生についてはいかがでしょう。
前田:英語を学びたい方には支援制度があります。上司やチームメンバーが海外にいるケースも多いので、国を超えて仕事をする中で新たな方法論や考え方を学ぶ機会には事欠きません。そんな刺激的な環境自体もひとつの福利厚生だと、私は感じています。
また、有給休暇に加えて10日間のパーソナル休暇制度があります。目的は問われないので、海外旅行をするのも、自己研鑽に時間を使うのも自由です。
林:有給休暇を申請する際、上司に許可を取ろうとしたら、、「それはあなたの権利だから許可はとらなくていいよ」と言われました。。取得理由を話す必要は当然ありませんが、Appierでのこのようなやり取りに、最初は驚かされました。
意思決定からアイデアの創出やコンテンツ制作まで。AIのさらなる可能性
—未来に向けたお話もお聞きしたいと思います。皆さんそれぞれ、仕事の上での目標を教えてください。
川口:現在は日本チームのリードとして働いていますが、今後は他の国のチームのリードもつとめられるよう、スキルアップしていきたいです。
前田:お客様のビジネスを成長させることに貢献しながら、英語力、ロジカルシンキング、交渉力など、自身のスキルを磨いていきたいですね。
林:AIの力を用いて、お客様にとって効果的なソリューションを提供し、Appierのプロダクトが世界的に展開できるよう貢献したいと思っています。
—最後に橘さんから、Appierの将来に向けた展望をお聞かせください。
橘:最先端のAIを多くの方に提供することで、あらゆるマーケティング課題を解決に導き、さまざまな事業者の成功と成長を支えていきたいと考えています。これまではユーザーの行動予測や意思決定の最適化、マーケティング分野の自動化と最適化に重点を置いて支援してきました。今後はAIがさらなる創造性を発揮し、アイデアの創出やコンテンツ制作を支援するなど、いわゆる生成AIを用いた製品群の拡大などで、事業領域が広がっていくことを視野に入れています。その結果、人間はより高い付加価値を生み出す作業に集中することになるでしょう。アジアに軸足を置きつつ、欧米市場への展開を強化し、グローバルに活用される法人向けソリューションとして認知度を上げることを目指しています。
取材後記
終始リラックスした、和やかな雰囲気の中で行われた今回の取材。グローバルに事業を展開するSaaS企業らしいオープンマインドと同時に、アジア発企業ならではの思いやりやあたたかさが感じられ、居心地の良い社風が伝わってくる。Appierの社内公用語は英語だが、日本人スタッフだけのミーティングでは日本語を使うなど、社内のコミュニケーションは臨機応変だ。もともと英語が母国語ではないメンバーが多いので、ある程度の語学力があれば、仕事を通じて英語力を向上させながらグローバル企業で実践を踏めるチャンスがある。日本にいながらグローバルな環境で働く絶好の機会を得ることができるだろう。
本インタビューは、働き方から企業をみつけるメディア「
本編はこちらからもお読みいただけます。
https://howhere.jp/articles/
H-appier : Hungry, Humble, Happier - appier
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Zhi Chang Li
Engineering Director
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